医療安全

訴訟リスクに備えよ~医賠責の限界を知る~

2020年9月11日 日経メディカル Online 医療安全

 準強制わいせつ罪で逮捕、起訴された乳腺外科医に対する控訴審判決で、一審無罪を破棄し有罪判決(懲役2年)が出されたことについて、衝撃を受けた医師も多かったと思います(関連記事)。つい「医療訴訟」とひとくくりにされがちですが、これは刑事事件であって民事事件ではありません。ですので、「訴訟から私たち医師を守ってくれるもの」としてパッと頭に浮かぶ医師賠償責任保険(医賠責)では、弁護士費用さえ出ません。そういうわけで、医師賠償責任保険の限界について改めて考えてみましょう。

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「4要件」を満たせば積極的安楽死は許される?

2020年9月9日 日経メディカル Online 医療安全

 先般、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者に対し薬物を投与し、患者が死亡したとして、医師2人が嘱託殺人罪の疑いで逮捕された件が報道されました。嘱託殺人罪とは、嘱託を受けて人を殺害する犯罪であり、刑法202条により、6カ月以上7年以下の懲役または禁錮に処するとされています。ちなみに、普通殺人罪の場合、死刑または無期もしくは5年以上の懲役に処するとされています(刑法199条)。今回の事件に関する報道の中には、過去の裁判例で挙げられた「積極的安楽死の4要件」を引き合いに出した上で、違法であるかのように述べているものがありました。では、「積極的安楽死の4要件」とは何でしょうか。

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認知症の方の誤嚥性肺炎の入院お願いします

2020年8月31日 日経メディカル Online 医療安全

今回のケースは、入院加療目的で紹介された患者さんです。

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今改めて振り返る「終末期」を巡る裁判例

2020年8月26日 日経メディカル Online 医療安全

 7月23日に筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性患者の嘱託を受けて殺害したとして医師2人が逮捕され、8月13日に起訴されました。罪名は、刑法203条の同意殺人罪です(法律で定める刑は6カ月以上7年以下の懲役または禁固となっています)。この事件を機に、患者の苦痛の除去のため積極的な医療行為により死に至らせる「安楽死」や、回復不可能な末期状態の患者に対し、人間としての尊厳を害すことなく死を迎えさせるために延命措置をしない、あるいは中止する「尊厳死」についての議論が活発になっています。そこで今回は、病院での「死の迎え方」が問われた裁判例を改めて紹介したいと思います(前回の損害論の続きは、後の回で紹介します)。

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「わいせつ」が問われた過去の裁判例の教訓は

2020年8月12日 日経メディカル Online 医療安全

 「逆転有罪」。7月13日に報道された判決の結果に、衝撃を受けた医療関係者は多いでしょう。乳腺腫瘍術後に病室のベッド上に横たわる女性患者の着衣をめくって左乳房を露出させて、左乳首を舐めるなどしたということで、医師が起訴されていた事件の控訴審判決で、東京高裁第10刑事部は、医師を無罪とした地裁の判断を覆して、懲役2年の有罪判決を下しました。術後、4人部屋の病室での手術直後の診察時という、医療関係者から見るとわいせつ行為が行われるとは考えにくい状況、術直後でせん妄が生じやすいという医学的知見などから、控訴審でも無罪判決が出るのではないかと考えていた医療関係者も多かったと思われます。

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33歳医師の過労死、病院が責任を認めた理由

2020年7月22日 日経メディカル Online 医療安全

過重労働による過労死としか考えられない。和解して正式に謝罪すべきだ──。こんな声を上げた人が病院側に現れ、遺族は「やっと主人のことを認めてもらえる。そのことが何よりうれ…

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「一家の支柱」が医療過誤で死亡、慰謝料の額は?

2020年7月22日 日経メディカル Online 医療安全

 今回から損害額について考えてみます。医療訴訟で、医師に過失があり、死亡などの結果発生との間に因果関係があることが分かれば、裁判所は、最後に損害額の認定をします。最高裁平成30年統計によれば、医療訴訟でそこまで行く事件は、判決で終った事件のうち18.5%です。残りの81.5%は、患者側の請求が認められずに終わっています。以下では、医師に過失があり、患者の死亡などとの因果関係があることを前提として、損害額がどのように決められているかをご紹介します

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「気の緩み」によるミスの再発はこう防ぐ!

2020年7月10日 日経メディカル Online 医療安全

医行為は人間が行うものである以上、ミスが生じ得るものです。実際に、手術ミス・投薬や処置などのミス・検査ミスなどの医療事故は少なからず発生しています。こうしたミスには、組織的な問題や個人的な問題など様々な原因があり得ると思いますが、今回は、主に個人的な問題が原因の場合に焦点を当ててみたいと思います。

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患者が「検査すべきだった」と提訴、判決が示す教訓とは?

2020年7月8日 日経メディカル Online 医療安全

 新型コロナウイルスに限らず、検査の意義や必要性に関する医師と患者との認識の違いからトラブルになり、裁判にまで至ってしまうケースは少なくありません。そこで、今回は、そうした事例で裁判所がどのような判断をしているのか、4つの裁判例を紹介し、そこから得られる教訓をお示しします。

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救命できた「相当程度の可能性」を否定、医師の過失は?

2020年6月24日 日経メディカル Online 医療安全

 今回から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連の話題を離れ、再び医療訴訟のお話に戻らせていただきます。 医師の過失行為と結果発生(死亡など)との因果関係については、こちらの連載で、死亡との因果関係が認められない場合でも、救命できた「相当程度の可能性」があれば、その可能性を侵害したものとして損害賠償が認められることを記載しました。

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感染症の訴訟対策としても読んでおきたい3つのガイドライン

2020年6月10日 日経メディカル Online 医療安全

 COVID-19の流行に伴う緊急事態宣言は解除されたものの、医療機関内における感染拡大の事例が依然として報じられています。院内での感染拡大と医療訴訟との関係については、本連載において今年3月に解説しました。それから約3カ月が経過した現時点では、院内感染対策に加えて、COVID-19と判明した患者に対する治療薬が特例承認され、他にも複数の候補薬が示されて注目を集めています。そこで今回は、感染症判明後の治療薬の使い方に関する医療訴訟事例を挙げ、このような場合における教訓を検討したいと思います。

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医師の電話指示の是非が問われた3つの裁判例

2020年5月13日 日経メディカル Online 医療安全

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大に伴い、電話やパソコンなどの情報通信機器を用いた診療に関する要件が緩和され(令和2年4月10日厚生労働省通知など)、初診患者や再診患者に「非対面式」の診療を行うケースが増えています。今回の緩和措置は時限的・特例的なものではありますが、患者の利便性追求の観点から、COVID-19が収束しても、オンライン診療などの非対面式の診療は拡大していくものと考えられます。そこで今回は、医師の電話による指示などの是非が問われた過去の医療訴訟事例を3つ挙げて、非対面式の対応を行う上での注意点を考察します。

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PCR検査問題に思う「ないこと」の証明の難しさ

2020年3月25日 日経メディカル Online 医療安全

新型コロナウイルスのPCR検査で、「検査結果が陰性であっても、ウイルスに感染していないとは限らない」点について、検査で陰性であればウイルスに100%感染していないとの誤解があり、メディアで話す専門家には正しく説明する役割がある、という指摘があります(海原純子氏「新・心のサプリ」、毎日新聞3月15日)。この点で裁判に関し思い出すのは、「ないこと」の証明です。

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院内感染の裁判で病院側が「無責」と判断される場合とは?

2020年3月11日 日経メディカル Online 医療安全

 現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって様々な社会的な影響が出ています。法的には、COVID-19は今年2月、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)6条8項の指定感染症と定められました。医療機関では、新型コロナウイルスの感染予防対策、患者からの問い合わせや要望への対応、職員の労働環境・労働衛生上の対策、さらには受診患者や職員が陽性と判明した場合の行政庁・マスメディアへの対応など、極めて多くのことを考えなければならない状況にあります。 そうした中で、特に感染予防について裁判所がどのように考えているかを知ることは、対策を講じる上で参考になります。

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死亡との因果関係がないのになぜ慰謝料?

2020年2月25日 日経メディカル Online 医療安全

 2月に、奈良地家裁から大阪高裁に転任しました。こちらの連載は継続しますので、引き続きよろしくお願いします。今回は、医師の過失行為と死亡などの結果発生との因果関係につき、さらに考えたいと思います。紹介する事案は、最高裁平成12年9月22日判決(民集54巻7号2574ページ)です。

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新型コロナでマルホがMRの医療機関訪問自粛

2020年2月21日 日経メディカル Online 医療安全

 マルホは2020年2月20日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大を受け、医療機関への医薬情報担当者(MR)などの訪問を自粛すると発表した。新型コロナウイルス感染症による製薬会社による講演会などの禁止が相次ぐ中、MRの訪問にまで影響が出た形だ。当面3月末までの措置とし、状況に応じて延長する。 全社員に対して医療機関への訪問を自粛する他、出張の延期・中止を求めたり、社内外の勉強会など大勢が集まる機会の主催や参加を極力回避する。高リスク者に接する医療機関のリスクを少しでも低減する狙いとみられる。

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誤嚥による窒息、勝訴・敗訴例の違いはどこに?

2020年2月12日 日経メディカル Online 医療安全

 「病院で出したもので父が誤嚥して、窒息したわけですよね。なぜ、誤嚥するようなものを出したんですか。看護師がそばで見てなかったんですか? すぐに気付いて先生を呼んで、取ってくれれば助かったんじゃないですか」──そんなことを家族に言われたとします。誤嚥による窒息事例です。こうした場合、医療訴訟では法的責任が認められるのでしょうか? 参考になる裁判例を3つ紹介します。

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「あずみの里」控訴審、初公判で結審

2020年2月3日 日経メディカル Online 医療安全

 長野県安曇野市の特別養護老人ホーム「あずみの里」(定員65人)で2013年12月、入所者の女性(当時85歳)がおやつのドーナツを食べていて意識を消失し、その後に死亡したことで業務上過失致死罪に問われた准看護師の控訴審の第1回公判が2020年1月30日に行われ、即日結審した。弁護側は「死因は脳梗塞と考えられる」とする3通の医師の意見書を含む16の証拠を提出し、医師や刑法の専門家など7人への証人尋問、裁判所が選任する鑑定人による医学鑑定を求めたが、裁判長は証拠1つを除いて全て却下した。判決言い渡し日は未定。 刑事訴訟となっているのは、社会福祉法人協立福祉会(長野県安曇野市)の特別養護老人ホーム「あずみの里」におい

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「○○をしなかったから死亡が早まった」の判断の難しさ

2020年1月29日 日経メディカル Online 医療安全

 「医師が必要な検査を行わなかったために疾病の発見が遅れ、死期が早まってしまった」――。患者側がこのように主張し、訴訟を起こすことは少なくありません。ある行為をしないことを、法律の世界では「不作為」と言います。上記の例は、「医師の不作為と死期が早まったこととの因果関係」が問われる裁判ということになります。今回は、この不作為と因果関係について考えてみます。

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死因の説明に遺族が納得せず…裁判例の教訓は?

2020年1月15日 日経メディカル Online 医療安全

 「父が死亡した原因は、本当は説明したものと違うのではないですか? 何か隠そうとしていますね」「母の死因が前回の説明と変わっていますね。もう信用できません!」──。そんなことを遺族に言われたとします。そして、医療内容に対してだけでなく、こうした死因(原因)の説明そのものが不合理であるとして、慰謝料を請求されたとします。では、この場合、慰謝料は認められるのでしょうか?

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「独善」「軽率」が刑事訴訟につながる因子

2020年1月8日 日経メディカル Online 医療安全

 厚生労働省は2019年12月27日、「医療行為と刑事責任の研究会」がまとめた中間報告を公表した。1999年から2016年までの医療訴訟に関する件数(確定年)を収集・分析したところ、民事裁判、刑事裁判ともに2000年代前半がピークで近年は減少傾向にあった(図1)。

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医師の1割が「患者側弁護士の来訪」を経験

2020年1月7日 日経メディカル Online 医療安全

患者側が弁護士を立ててのトラブル事例(同僚や部下の事例も含む)に巻き込まれた医師の割合が、過去5年で9.8%にも達することが、本誌調査により明らかになった。近年、医療訴訟に参入する弁護士が増加しており、同様の経験をする医師が今後増える可能性がある。日経メディカル2020年1月号の特集では、弁護士の変容を含む「新型」医療訴訟の実態と対応策を取り上げる。

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裁判所は過失と後遺症の因果関係をどう判断?

2019年12月25日 日経メディカル Online 医療安全

 今回から、「因果関係」について考えてみたいと思います。患者の医療機関に対する損害賠償請求が認められるためには、医師の過失と結果発生との間に「因果関係」があることが必要です。「医師に過失があったけれど、過失がなかったとしてもやはり死亡していた」というように、医師の過失と患者の死亡との間に因果関係がない場合には、原則として損害賠償請求は棄却されます。

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見落としは99.9%医療側の過失、どう対策する?

2019年12月12日 日経メディカル Online 医療安全

 画像診断に対する放射線科読影リポートの記載を主治医が見落とし、治療が遅れたことで患者側から訴えられる事案が近年、見られるようになってきた。報告書見落としの経緯がどうであれ、原則、「見落とした」という医療側の過失は免れることができないと考えてよさそうだ。訴訟を起こされる前に、先手を打った対応が求められる。

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証人として出廷要請も!診断書記載はここに注意

2019年12月11日 日経メディカル Online 医療安全

 医師が行う業務の1つに診断書の作成があります。診断書発行業務は、ややもすれば「面倒くさい」と思われるかもしれませんが、医師の責務の1つです。学校や企業、保険会社、役所、裁判所など様々な場所に提出されることのある診断書は、身分証明書を除く様々な証明書の中で、最も身近な存在であるといってもよいでしょう。それだけ、診断書が求められる局面は多く、大きな効力を持つものなのです。

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高齢者の脆弱性骨折をトラブル化させるその一言

2019年12月5日 日経メディカル Online 医療安全

 高齢化の進展などを背景に、高齢患者に関する医療訴訟やトラブルが目立っている。中でも、骨密度の低下した高齢者が入院中、わずかな外力で気付かないうちに骨折するケース(脆弱性骨折)に対して、「お年のせい」と安易に説明してしまうことで、大きなトラブルに発展することが少なくないようだ。

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「何かあれば受診するように」の説明で敗訴

2019年11月27日 日経メディカル Online 医療安全

 今回は、患者が退院する際、医師にどのような療養方法の指導、説明が求められるかについて考えてみます。療養方法の説明としては、薬の服用方法、通院に関する説明などがあり、訴訟で争われることが多いのは、「どのような症状が現れると病院を受診する必要があるか」の説明です。今回紹介する最高裁平成7年5月30日判決(判例タイムズ897号64ページ)は、退院時の療養指導に注意義務違反があるとしたものです。二審の大阪高裁では、注意義務違反を否定しており、この判決を破棄し、差し戻した形となりました。

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増加中の「新顔」弁護士は手強い?それとも…

2019年11月14日 日経メディカル Online 医療安全

 近年、医療訴訟において医療機関側が相対することになる、患者側弁護士やその協力医の顔ぶれが大きく変化している。手ごわい「新顔」弁護士や協力医の意見書に苦戦を強いられることもあれば、逆に無理筋ともいえる提訴で患者側が過失を絞り込めず、訴訟がずるずると長期化してしまうケースも。以前は見られなかった新型の医療訴訟の相手方、その実像とは――。

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採血に伴う神経損傷、勝訴と敗訴の分かれ目は?

2019年11月13日 日経メディカル Online 医療安全

 「血液を採ったときに神経を傷付けましたね。責任を取ってください。」――患者や健診の受診者から、このような訴えがあったことはないでしょうか。採血や注射に伴い神経障害が生じたとしてトラブルになることは、しばしばあるかと思います。では、採血・注射に伴って神経を損傷した場合には、医療訴訟で過失が認められるのでしょうか。以下、4つの裁判例を紹介したいと思います。

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「添付文書に従わないと裁判で負ける」の誤解

2019年9月24日 日経メディカル Online 医療安全

 今回は、医薬品の添付文書の記載内容に反した診療を行った場合の裁判所の判断について検討したいと思います。 医薬品は、これに添付する文書等に用法、用量、その他使用および取り扱い上の注意などを記載しなければならないとされています(医薬品医療機器等法52条1項)。では、医師がその注意義務に反することをした場合に、過失は認められるでしょうか。 これに関する判決として、最高裁平成8年1月23日判決(民集50巻1号1頁)があります。

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日本の医療訴訟、診断エラーが原因は39.3%

2019年9月18日 日経メディカル Online 医療安全

 日本の医療訴訟において、診断エラーが原因となった事例は39.3%と高く、欧米の先行研究の結果と同程度であることが分かった。1800件もの判決を基にした調査で明らかになったもので、島根大学医学部医学科5年の大槻和也氏 (指導教官・島根大学医学部附属病院卒後臨床研修センターの和足孝之氏) らが、第19回日本病院総合診療医学会学術総会(9月14~15日、佐賀市)で報告した。

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「無診察治療」を巡る訴訟、裁判所の判断は?

2019年9月11日 日経メディカル Online 医療安全

 「薬だけください」――。そう言って、医療機関を訪れる方がいます。原則として、診察もせずに処方をすることは禁止されています。医師法20条は「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し(中略)てはならない」としているからです。 それでは、治療に当たっては、必ず患者に対面しなければいけないのでしょうか。この点について、参考になる裁判例を4つ紹介します。

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「年960時間超え」には2021年までの時短計画策定が必須に

2019年9月4日 日経メディカル Online 医療安全

 厚生労働省は2019年9月2日、医師の働き方改革の推進に関する検討会を開催。「追加的健康確保措置」の履行の確保と「医師労働時間短縮計画(時短計画)」の策定などについて議論、概ね了承された。いずれも、勤務する医師が年間960時間を超える時間外労働を行う医療機関に義務化されることになる内容で、特に時短計画については、2021年中に策定しなければ2024年度の法改正に間に合わなくなることから、注目を集めることになりそうだ。

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3つの裁判例に見る「正しい患者への謝り方」

2019年8月28日 日経メディカル Online 医療安全

 医療現場で、「後々トラブルになったときに備え、患者や家族に謝罪しないように」と言われることはよくあると思います。では、謝罪をすると、実際に医療訴訟で不利に扱われるのでしょうか。この点について、裁判例を3つ紹介します。1つ目の裁判例は、訪問診療、訪問看護を受けていた在宅患者に左大腿骨骨折が見つかり、その後、大腸癌で死亡した事例です。

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身体拘束が違法か否かを判断する「3つの基準」

2019年8月26日 日経メディカル Online 医療安全

 今回は、不穏な状態にある患者をベッドに拘束することが違法か、という問題を考えてみたいと思います。 病院における患者の身体拘束の是非が裁判で争われ、最高裁の判断が示されたケースとして、最高裁平成22年1月26日判決(民集64巻1号219ページ)があります。当直の看護師らが入院中の患者Aの両上肢をベッドに拘束したことに対し、Aの子らが、違法な行為であるなどと主張して損害賠償を求めました。

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健診での肺癌見落としは裁判でどう判断される?

2019年7月24日 日経メディカル Online 医療安全

 今回は、集団健診について考えてみたいと思います。事業者には年1回、労働者に対し健康診断を受けさせる義務があります(労働安全衛生法66条、同規則44条)。検査項目のうち、診断結果を巡ってトラブルになりやすいのが胸部X線検査です。

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添付文書とガイドラインで異なる記載、どちらを優先?

2019年7月10日 日経メディカル Online 医療安全

 医薬品の使用が関係する医療訴訟で、医師の過失などを判断する材料として医薬品の添付文書が重視されることはご存じかと思います。実際、この点については有名な最高裁判例があり、「医師が医薬品を使用するに当たって添付文書に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定される」としています(1996年1月23日判決)。

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診療1カ月後のカルテ追記、紛争で不利になる?

2019年6月11日 日経メディカル Online 医療安全

 医療訴訟では、カルテに記載されている事実は、基本的に信用性が高いと判断されています。それは、専門的な資格を持つ者が、その職務に基づいて記載をするものだからです(2014年1月28日岡山地裁判決)。では、カルテに追記された内容に関してはどうでしょうか。

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医師の過失の判断基準は「医療水準」以外にも

2019年5月28日 日経メディカル Online 医療安全

 今回も、医療裁判で医師の過失がどのように認められるかについて考えてみます。 医師の過失の有無を判断する際の基準となるのが「医療水準」で、医療水準を満たしていないと過失が認められます。医療水準は、前回書きましたように、未熟児網膜症の診療において新しい治療法である光凝固法を実施しなかったこと、あるいは実施している医療機関に転医しなかったことが過失と言えるか、という議論を起点としています。つまり、医療水準が問われるのは、新たな治療法をすべき義務があったかが問題となる場面です。

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裁判官は医師の過失をどのように判断するのか

2019年4月24日 日経メディカル Online 医療安全

 今回から、医師などの過失(注意義務違反)について考えてみます。医療訴訟において、医師の過失は「医療水準」を基準として判断することが確立しています。最高裁昭和57年3月30日判決(判例タイムズ468号76ページ・高山日赤事件)が「注意義務の基準となるべきものは、診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準である」と述べて以降、最高裁判決で同様の判断が示されてきました。

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治療法選択の「熟慮」の機会与えず敗訴

2019年3月26日 日経メディカル Online 医療安全

 今回は、治療方針の説明において「経過観察」の選択も含まれる場合の対応を考えてみます。医師が治療方針を検討する際、幾つかの療法に関する選択肢とともに、「いずれの療法も受けずに保存的に経過を観察する」という選択肢を提示する場合があります。こうしたケースで、近年、治療前の説明義務を巡り紛争が発生しているものとして、未破裂脳動脈瘤の予防的手術が挙げられます。

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医療事故を起こした医療者本人にも心のケアを

2019年3月14日 日経メディカル Online 医療安全

 医療事故を起こした医療者の心のケアを行う「ピア・サポーター」を院内に配置する病院がこの半年で2施設登場した。ピア・サポート制度を導入した経緯や、その効果について聞いた。

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オスラー式フィードバックで診断エラーを減らす

2019年3月5日 日経メディカル Online 医療安全

最近になり、患者安全における診断エラー予防の重要性が強調されてきている。実際、患者診療で発生する診断エラーは、担当する個々の医師の認知的判断に依拠する部分が大きい。誤診…

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人権侵害の医師法第21条通知、厚労省は廃省せよ

2019年3月1日 日経メディカル Online 医療安全

 厚生労働省の劣化が著しい。現在、国会で話題になっているのが勤労統計調査の不正である。毎月の賃金の動向などを調査し、景気の分析や労働保険の給付金などの算定に用いられるのが「基礎統計」。本来、基礎統計は東京都の常用労働者数500人以上の事業所を悉皆的に調査すべきところ、2004年から手抜きをしてサンプル調査していたことが発覚したという事件だ。

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裁判官の立場から見た「時間外労働の上限」問題

2019年2月26日 日経メディカル Online 医療安全

 厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」において、医師の時間外労働の上限規制を原則年間960時間以内・月100時間未満とし、地域医療確保の観点からやむを得ずこの水準を到達できない場合には、暫定的な措置として「年間1860時間」とする事務局案が提示されました。研修医など、技能向上のため一定期間、集中的な診療を必要とする医師についても「年間1860時間」の特例を適用する案を示しています。 かつて労働災害事件を裁判所で数年間担当していたことがあり、過労死等はかなりの件数を経験しました。

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胃亜全摘術後に胃潰瘍と判明、執刀医が有責

2017年9月25日 日経メディカル Online 医療安全

胃癌疑いで手術予定の患者の病変形態が、術前に変わりました。しかし、担当医は病変の変化を詳しく再検討せず、胃癌疑いのまま手術を実施しました。術後に胃癌でなかったことが判明…

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気管切開への踏み切り遅れで後遺症、過失認定

2017年9月4日 日経メディカル Online 医療安全

顔面神経麻痺で星状神経節ブロック注射を受けた患者の頸部と縦隔に血腫が生じ、気道狭窄を来した結果、低酸素脳症による重篤な後遺障害が残りました。裁判所は気管切開の実施が遅れ…

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わずかの延命は賠償に値せず、高裁で逆転判決

2017年8月28日 日経メディカル Online 医療安全

脳梗塞による呼吸不全で患者が死亡しました。遺族は、呼吸器の警報音に気付かなかった看護師に過失があると訴えましたが、裁判所は病院の過失を否定したのに加え、延命期間がわずか…

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看護師がI.C.に同席し患者の理解をサポート

2017年8月15日 日経メディカル Online 医療安全

看護師が医師による説明の場に同席し、患者や家族の理解度を把握しつつ不足を補い、医師にフィードバックしている医療機関もある。形ばかりのインフォームド・コンセントに陥らない…

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「説明を尽くしたのに敗訴」のなぜ

2017年8月9日 日経メディカル Online 医療安全

 「医師はしっかり説明したというが、患者・家族はそんな説明は聞いていないと訴える裁判が目立つ」。こう話すのは、医療側の弁護活動を展開する仁邦法律事務所(東京都新宿区)所…

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